WHOのテクニカル・リポートは疫学、教育、医療、健康教育ならびに疾病予防の分野において、各国の口腔保健担当当局に指針を与えてきた。その中で疫学データを処理する情報科学の必要性が述べられている。しかし、先進工業国の中では希有な高齲蝕罹患率、歯率を示す我が国において、地域保健管理の重要性が認識されているにも関わらず、疫学研究を基礎とした地域歯科保健管理システムの構築に関する研究が遅れているのが現状であり、そのために地域特性の把握、齲蝕罹患因子等の推定が漠然としたものとなり齲蝕予防を効率よく行うのは不十分である。そこで我々は徳島県名西郡石井町で12年間にわたり乳幼児歯科保健管理プログラムを実施しているが、そのデータを管理、分析を行うデータベースシステムDENT(Dental Epidemiology-system produced by Nishino in Tokushima university)を構築し、齲蝕要因等の分析結果を保護者にフィードバックした。しかし、フィードバックデータは数値的データのみであり、また、インターネットに接続されていないため、フィードバックデータを効率的に地域に返すことができていなかった。そこで我々は、地域歯科保健管理システムに関与している医療従事者が、口腔内状態や統計データを視覚的に、データ分析時に即座にその結果を見ることができるインターネット版のi-DENT(the Internet DENT)を開発した。 i-DENTにより歯科保健管理プログラムに関与する人々(医療従事者及び保護者)が地域特性の把握、および齲蝕罹患因子等の推定が日々更新されるデータをもとに判断できるシステムとなった。今後は、個人へのスケジュール管理及びフィードバックのために携帯電話を考慮したシステム構築を行う。
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