昨年度作成した口腔診査票、アンケート用紙、および口腔内機能評価テストにより、調査を実施し解析を行った。調査対象者は、長野県佐久市における老人保健施設の入所者50名である。事前に施設職員によって調査可能と判定されたのは40名であり、そのうち調査を拒否した者が6名、調査時に退所していた者が3名であり、調査は31名(男性7名、女性24名)について実施された。 今回の調査では、口腔保健および要介護にかかわる実態と今後考慮すべき内容の基礎データが得られた。注目されるいくつかの点は、1)要介護者の口腔の機能とそれに関連している口腔状態の因子群について、アンケート調査、口腔保健診査、口腔内機能試験および口腔細菌の検査を実施してその成績を検討した。2)今回作成した口腔ケア・アセスメント票について、設問や回答肢の設定にいくつかの改善を要する内容が指摘された。3)「生きがい(生活活力度)」について今回の調査でその基礎データが得られた。4)口腔機能評価については、(1)咬合力テストは、オクルーザルフォースメーター登録商標を使用して口腔内の3部位を測定した。前歯部で測定値を得られなかった者がとくに多かった。また臼歯部においても測定値は殆どの者で10kg以下であり、今後咬合力テストの項目については測定方法あるいは測定条件などについて検討する必要性がある。(2)摂食嚥下機能の評価として、フードテストと水飲みテストを実施した。摂食中または嚥下後に「むせが起こった者」については、このテストの妥当性をさらに検査する必要性がある。また水飲みテストでは、フードテストよりも検出される者が多くなるが、誤嚥の危険も懸念されるので調査時に注意が必要である。(3)口臭テスト(口臭測定装置アティン登録商標)については、被検者の負担が大きく調査者の主観と測定値に開きがあった。(4)細菌検査(カンジダ菌)については、大部分(66.7%)の者で口腔内カンジダ菌が検出された。検出された菌種(とくにC.albicans)、検出部位およびコロニー数などによって今後どのように口腔ケア・プログラムを作成し介入していくかが検討課題である。 今後の検討課題としては、口腔ケア・アセスメント票から口腔ケア・プログラムを作成し、専門家による口腔ケアを実施するとともに、施設介護におけるそれぞれの役割について明らかにしたい。
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