<目的>本研究は、高齢者の口腔内の状態ならびに摂食機能状態が栄養摂取状況とどのような関連があるのかを明らかにすることを目的として調査を行った。特に本年度は、平成12年度から導入された要介護認定を受ける高齢者を中心に検討を行った。要介護認定を受けている高齢者は、全身の機能の減退が著しく、身体的にも精神的にも多くの問題を抱えている。基礎体力の基本となる栄養の面においては、タンパク質・エネルギー低栄養状態(protein energy malnutrition:PEM)が最大の問題となっている。 <方法>静岡県内A特別養護老人ホームにおいて要介護認定を受けた女性50名、平均年齢83.1歳について調査を行った。栄養状態の指標としては、食事摂取状況、日常生活動作(ADL)、血液検査、身体計測、ならびに安静時エネルギー代謝(安静時代謝)を測定した。また、口腔内審査としては、う蝕、補綴物の状況等の検診を行った。健全歯、処置歯、う蝕度C1〜C3を合わせて機能歯とした。PEMリスク者は、血清アルブミン(アルブミン)値3.5g/dl以下の者とした。統計処理は、SPSS10を用い一元配置分散分析を行った。 <結果ならびに考察>調査対象者の要介護度の割合は、要介護度1が15.4%、2が17.3%、3が9.6%、4が40.4%、5が17.3%である。麻痺、痴呆は見られるものの全体の82.3%が食事を自立して摂取できる状態であった。口腔内の状況は、要介護度4、5において悪化する傾向にあった。とくに機能歯+義歯については、要介護度1に対し要介護度4、5で有意に悪くなっていた。今回調査した高齢者施設では、入所者の身体ならびに口腔内の状態に合わせて食事の形態が決定されていた。このため喫食率はどの要介護度においても95%以上であり、要介護度による有意差は認められなかった。安静時代謝ならびに上腕三頭筋面積とも要介護度4、5で有意に減少していた。PEMリスク者の発生率は、要介護度の高い群において高値を示したが有意な差は見られなかった。
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