研究概要 |
1.Er:YAGレーザー照射により形成された骨欠損部の長期治癒経過の観察 1)ラットの頭蓋骨にEr:YAGレーザー照射によって作製した骨欠損部について,電気メスによる処置面と比較を行ったところ,熱変性は僅かで電気メス処置に比べて早期の新生骨形成が認められた. 2)Er:YAGレーザーによる骨切削と,回転式切削器具であるスチールバーによる切削では,切削効率は同等であったが,早期の新生骨の形成はレーザー処置の方が良好である傾向が認められた.しかしながら,レーザー処置表面には,わずかな変化層が残存するため,現在長期経過を観察中である. 2.Er:YAGレーザーによる骨組織の蒸散面の構造・組成変化に関する基礎的検索 1)レーザー照射後の骨組織表面および表層の微細構造変化について走査型電子顕微鏡および透過型電子顕微鏡による解析を行った.レーザー照射面は特徴的な鱗片状の粗造な面を呈し,表層にマイクロクラックを有する蒸散層が生じていたが,明らかな熱損傷は認められなかった. 2)フーリエ変換赤外線分光光度計などを用いた組成変化の解析では,Er:YAGレーザー処置面の組成変化層は厚さ約40μmと僅かであった.CO_2レーザー処置にみられる新たな為害物質の発生もなかった.以上1,2の結果より歯周外科における骨処置への臨床応用の可能性が示唆された. 3.歯周病羅患歯根面に対する効果と影響 1)Er:YAGレーザーが歯根セメント質,象牙質におよぼす微細構造の変化および組成変化については,処置面に重篤な熱変性はなく,CO_2レーザー処置にみられる新たな為害物質の発生はなかった. 2)Er:YAGレーザー照射による歯周病羅患根面の廓清後の滅菌効果について,抜去直後の歯周病罹患歯根面を用い検討したところ,十分な滅菌効果が認められ,さらに,Er:YAGレーザー処置は超音波スケーラー処置よりも根面の滅菌効果が高い可能性が示唆された.
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