研究概要 |
健全歯根膜からの細胞遊走を抑制させた環境で,recombinant human bone morphogenetic protein-2(rhBMP-2)が新生セメント質を誘導するか否か,健全歯根膜からの細胞遊走が,rhBMP-2による新生骨形成量に影響を与えるか否かを明らかにするため,以下の実験を行った. ビーグル犬9頭の下顎左右前臼歯部において粘膜骨膜弁を剥離し,歯冠を切除した.根周囲に深さ5mmの水平性歯周組織欠損を作製し,第2前臼歯遠心根,第4前臼歯近心根の歯髄を封鎖して,それ以外の根を抜去した.第4前臼歯近心根にのみ,欠損底部に矯正用リガチャーを設置して健全歯根膜からの細胞遊走を抑制した.歯根周囲にrhBMP-2/ポリ乳酸ポリグリコール酸共重合体含有ゼラチンスポンジ(PGS)複合体,またはPGSのみを埋植し,弁を縫合した.術後12週で組織標本を作製し,組織計測を行った. 健全歯根膜細胞の遊走抑制の有無によらず,rhBMP-2によって新生骨の形成が有意に促進された.また,rhBMP-2による,新生セメント質形成量への影響は認められなかった.骨性癒着形成量は,健全歯根膜細胞の遊走を抑制しなかった場合には,rhBMP-2の有無で有意差が認められなかった.また,本実験条件下では,健全歯根膜からの細胞遊走が抑制された環境において,セメント質は誘導されなかった. 上記結果をふまえ,骨性癒着を抑制して,新生セメント質の形成を促進する目的で,エナメルマトリックス抽出物(EMD)を併用する予備実験を,同様の実験モデルを用いて行った.その結果,rhBMP-2による新生骨形成は,EMDの併用によって大きな影響を受けないこと,および,健全歯根膜細胞の遊走が抑制されない環境において,新生骨形成にともなう歯根面への骨性癒着はEMDにより抑制され,新付着が促進されることが示唆された.
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