外傷性咬合と炎症の共同破壊における神経/免疫系の関与を検討するため、まず咬合性外傷モデルを作成し、病理変化を観察した。つまり、ラット左側上顎第一臼歯に高さ約1mmの金合金インレーを装着し、左側下顎第一臼歯に外傷性咬合を与えた。そして経時的に下顎第一臼歯根間中隔の組織破壊の状態を病理組織学的に観察した。その結果、まず分岐部歯根膜の変性が起こり、外傷付与2日後より根間中隔にて破骨細胞が増加し、その3日後に最大となった。その後5、7日になると破骨細胞数は減少し、20日以降ではほとんど見られなくなった。また同部において、骨吸収を促進するといわれているサイトカインであるIL-1β陽性細胞の分布を組織学的に調べると、外傷性咬合付与1日後より著しい増加が認められ、3日後まで多くの陽性細胞が観察された。しかし陽性細胞は5日後より減少し、対照群と同程度になった。IL-1β陽性細胞が増加し、その後に破骨細胞が増加したことより、IL-1β陽性細胞の同定はしていないが今回の咬合性外傷モデルの骨吸収にもIL-1βが促進的に関与していると考えられた。次年度はまず、同モデルにおいてIL-1β陽性細胞の同定や、神経分泌物の一つであるcalcitonin generelated peptide(CGRP)の出現状況を観察する。次に炎症を伴った場合の咬合性外傷時に見られるIL-1β、CGRPの動態を調べ、外傷性咬合と炎症の共同破壊における神経/免疫系の関与の一端を明らかにしたい。
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