研究概要 |
【目的】Ca拮抗薬は,副作用として歯肉に増殖を引き起こすことが知られている。現在まで動物モデルにおける歯肉増殖症についての研究では,薬理作用と歯肉の増殖との関係が課題とされ,実際の血圧に関する因果関係は明らかにされていなかった。本実験では,従来の実験動物モデルでは補うことができなかった高血圧の物理的因子を,高血圧自然発症ラットを用いることにより補い,発症のメカニズムについて免疫組織化学的研究の側面も含め解明することを目的とした。 【材料と方法】実験動物には,高血圧自然発症ラット(Spontaneously Hyper tensive Rat;SHR)と,対照として正常血圧ラット(Wistar Kyoto Rat;WKY)を用いた。SHRおよびWKYに6週間,Ca拮抗薬ニフェジピン(dihydr opyridine系)の強制投与を行い病理組織学的に比較検討した。さらに歯肉結合組織ではIII型,IV型collagenの局在について,また上皮下基底層ではIaminineの局在について免疫組織化学的に検討を行った。 【結果】歯肉の増殖は、SHR NIF群>WKY NIF群>SHR 対照群>WKY 対照群であった。病理組織学的所見では、SHRとWKYともにNIF群で、歯肉上皮の肥厚、上皮下結合組織の炎症性細胞浸潤、上皮脚の突出、コラーゲン線維の不規則な走行や太い線維束の形成が認められた。免疫組織化学的所見では、III型collagenの局在は、頬側の外縁上皮直下の歯肉結合組織においてSHRとWKYともにNIF群で対照群と比較して強陽性を示し、IV型collagen、laminineの局在は上皮下の基底膜および血管壁においてSHR対照群が他の群に比較して強く認められた。また特徴的な所見としては、SHR対照群が他の3群と比較して内縁上皮の肥厚が顕著であった。 【結論】薬物の副作用だけでなく血圧も、ニフェジピン歯肉増殖症に影響を及ぼすことが示唆された。
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