セメント質由来細胞接着因子(CAP)は56kDaのセメント質中に存在するコラーゲン様細胞接着因子として報告されてきた。また最近の研究よりCAPは各種間葉系細胞に接着し、integrin receptorを介して線維芽細胞に細胞内情報伝達を誘導することが確認されている。今回の研究では抗CAPモノクローナル抗体を作製し、セメント質形成機構とCAPの関連性を調べた。歯根形成期ウシ歯胚を用いて免疫染色を行うと、抗CAPモノクローナル抗体:3G9はセメント質およびセメント芽細胞に特異的に染色することが判明した。CAPと相同性の高いI型collagenの抗体を用いて染色したところ、この抗体は歯胚全体に陽性反応を示した。またセメント質中に存在する非コラーゲン性タンパク質であるbone sialoprotein、osteocalcin、osteopontinの局在を免疫染色で調べると、これらはセメント質および歯槽骨のマトリックス中に存在することが確認された。しかし3G9はセメント質のみを認識し歯槽骨中には存在しなかった。歯胚中に存在するCAPを3G9を用いた抗体カラムを用いて精製したところ、65kDaのタンパク質が精製された。この65kDa CAPの生物学的特性を調べるため歯根形成期ウシ歯胚より歯小嚢細胞を分離培養し、細胞接着試験を行ったところ、65kDaCAPはタンパク質濃度2.5μg/mlでI型collagenおよびfibronectinと同程度の細胞接着活性を示した。これらの結果よりCAPはセメント質特異的に存在する接着因子で、また歯小嚢細胞の接着を誘導することによりセメント質形成に関与するものと思われる。次年度は歯小嚢細胞のCAP産生能力を調べる予定である。
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