研究概要 |
前年度までにセメント質細胞接着因子が(CAP)のモノクローナル抗体を作製し、CAPが歯胚中のセメント質およびセメント芽細胞に限局して存在することを見出してきた。またCAPは歯胚中で65kDaの蛋白質として存在し、歯小嚢細胞に対して細胞接着活性を示すことからセメント質形成のマーカー分子になる可能性も示唆した(現在投稿中)。今年度はCAPの発生過程のprocessingを調べる目的で、歯胚中と永久歯に存在するCAPの分子量を比較検討した。結果はCAPが歯胚中で65kDaの分子量として合成され、永久歯では56kDaに分子量が変化することを明らかにした。またCAPの蛋白質濃度は歯胚から永久歯へ成熟する過程で減少することからも、CAPはセメント質形成の初期過程に関与するマトリックスで、成熟過程において修飾を受け56kDa formとしてセメント質に存在することが示唆された。また65kDaCAPが従来報告されてきたようにコラーゲン様蛋白質であるか否かを調べるために、細菌性コラゲナーゼで処理したところ65kDa CAPが完全に消化されることが認められた。これらの結果より、CAPはコラーゲン性蛋白質でセメント質の形成過程で修飾を受けることが判明した。次にCAPの構造を決定するために、再度CAPの精製の効率化を試みるため、歯胚を酢酸とグアニジン塩酸を用いて蛋白質を抽出し、この可溶性画分をDEAE Sephacel,Q-Sepharose,Mono-Qと3種類の異なる陰イオン交換樹脂を用いて精製を行った。この方法により>1μgのCAP精製に成功した。現在は得られたCAPの内部アミノ酸配列の解析を実行中である。また一部得られたアミノ酸配列を基にウシ歯胚よりRNAを抽出し3'RACE cloningを行ない、cDNA配列の解析も試みている。今後はCAPのcDNA cloningを目的に、歯小嚢細胞からセメント芽細胞の分化誘導を行ない、CAPのcDNA cloningを効率よく行えるlibralyの作製を試みる予定である。
|