研究概要 |
本研究は,歯根膜線維芽細胞(PDL)上に発現するHLAクラスII分子のレセプター分子として機能することの可能性およびそれら分子の役割を明らかにすることを目的とする。その第一歩として,PDLを抗HLA-DRおよ-DQ抗体で刺激することにより,1)PDLが示す表現型をサイトカイン産生を指標として評価すること,2)その細胞内におけるシグナル伝達系を調べることを戦略とする。本年度は1)被験PDL株の樹立,および2)PDL膜上のHLAクラスII分子を刺激した時に産生されるサイトカインの同定を行なった。なお,歯周組織を構成する線維芽細胞という観点から,PDLに限らず歯肉線維芽細胞(GF)も被験細胞に加えた。その結果以下の成果を得ることができた。 1)健常者2名からPDLおよびGFを得ることができた。 2)樹立した細胞株について,抗HLA-DRおよび-DQ抗体を用いてそれぞれの分子を介した刺激を与えた結果,IL-8およびMCP-1などのケモカイン,さらにIL-6を産生することが分かった。単球などHLA-DRおよび-DQ分子を発現する血球系の抗原提示細胞は,HLAクラスII分子を介した刺激を与えることによってIL-1β,IL-12等のモノカインを産生することが明らかになっている。しかし,PDLおよびGFなどの線維芽細胞は,それらモノカインを産生しなかった。なお,ケモカインにおいてもMIP-1αおよびRANTESについては産生されなかった。 以上の結果から,PDLおよびGF上に発現するHLA-DR-およびDQ分子は,これら細胞がサイトカインを産生する際のレセプター分子となり得ることがわかった。来年度は引き続き,HLAクラスII分子を介した刺激によって誘導される細胞内シグナル伝達経路について調べる予定である。
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