若年性歯周炎の病原菌であるActinobacillus actinomycetemcomitansをマクロファージに感染させるとアポトーシスが誘導されることを、我々の研究グループは報告し、さらに、A.actinomycetemcomitans の感染のみだけではなく、この菌の産生する新規毒素もマクロファージにアポトーシスを誘導することをも報告した。これによって、これら歯周病原菌によるアポトーシスの細胞内メカニズムの解析が大きな課題となった。一方、細胞のアポトーシスの過程においては、カスパーゼと呼ばれる蛋白質分解酵素ファミリーがその実行分子となり、細胞内器官を分解してアポトーシスの過程が進行する。このカスパーゼは、炎症とアポトーシスに関与するものに分けられ、さらにアポトーシスに関与するものは、細胞死のシグナルを受けて活性化される上位カスパーゼと、上位カスパーゼにて活性化される下位カスパーゼに大別される。そこで本研究では炎症に関与するカスパーゼとしてCaspase-1を、アポトーシスの実行分子として最も強力なCaspase-3の両方に注目し、このカスパーゼの阻害ペプチドを用いてA. actinomycetemcomitans の感染マクロファージのアポトーシスの過程にどの様にカスパーゼが関与するかを検索した。先ず初めに、感染マクロファージ内ではCaspase-3が活性化している事を、Caspase-3の標的蛋白の一つであるRbタンパク質の分解をin vitroで確認した。さらに、Caspase-1及びCaspase-3の両方の阻害ペプチドを用いると、感染マクロファージのアポトーシスは抑制され、さらにCaspase-1阻害ペプチドにおいてはIL-1βの感染マクロファージからの産生を抑制した。現在、上位カスパーゼのA. actinomycetemcomitans の感染マクロファージのアポトーシスの関与を検索中である。
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