研究概要 |
界面活性剤による超原子価ヨウ素化合物の触媒的活性化とその触媒的不斉酸化反応への応用を目指して研究実施計画に基づき研究を行った。昨年、我々はカチオン性界面活性剤であるcetyltrimeth ylammonium bromide(CTAB)により形成されるミセル反応場での低活性超原子価ヨウ素試薬であるポリマー状のヨードソベンゼンの中性緩和な条件下での触媒的活性化に初めて成功した。今年度は、その不斉合成反応への展開としてスルフィド類の不斉酸化反応を検討した。まず光学活性な界面活性剤を用いてキラルミセルの形成による不斉誘起を試みたが、ほとんど選択性は発現しなかった。種々検討した結果、CTAB逆相ミセル系に触媒量のジアシル酒石酸を添加し、極めて溶解性が低く反応性も低い5価のヨウ素試薬であるヨードキシベンゼン(PhIO_2)を用いることにより比較的良好な光学収率でスルフィド類からスルホキシド類への触媒的不斉酸化反応が進行することを見出した(J.Org.Chem.,1999)。これまで超原子価ヨウ素試薬を用いる不斉酸化反応に関して当量以上の不斉源が必要であると共に光学収率も極めて低かったことから今回見出した方法は遷移金属触媒が不要かつ超原子価ヨウ素試薬を用いて初めての触媒的不斉酸化反応であることから次年度は本法の一般性の拡張と他反応の不斉化へと応用してゆきたい。
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