研究概要 |
(1)イノラートアニオンの特性を利用した新反応の開発 a)カルボニル化合物の高立体選択的オレフィン化反応 イノラートアニオンとアルデヒドを室温で反応させると、[2+2]環化付加反応によるβ-ラクトンエノラートが中間体として生成、これがすみやかに開環し三置換オレフィンをE体のみ与えた。さらに、ケトンを基質にすると従来にない高いE選択制で四置換オレフィンを得ることができた。ここでアセトフェノンを基質とした時、E/Z比は4:1であったが、ベンゼン環のパラ位に電子吸引性基を導入すると選択制は飛躍的に向上し最高>99:1の選択性を達成することができた。この立体選択性(E/Z比)の対数とパラ位置換基のσ値との間に直線関係が成立し、なんらかの立体電子効果が発現しているものと考えられる。 b)タンデム型[2+2]環化付加-ディックマン縮合反応によるシクロアルケノンのワンポット合成 イノラートアニオンをケトエステルと-78度で反応させると、中間体で生じるラクトンエノラートのディックマン型の縮合により閉環反応が進行し、二環性ラクトンが生成した。これは容易に脱炭酸し、有機合成上有用な2,3-二置換シクロアルケノンが高収率で得られた。以上の連続する三つの反応をワンポットで行うことも可能である。
|