研究概要 |
新規な5座配位子をもつ鉄錯体、すなわち種々の二トリルから由来する側鎖を第5配位子とする[2,4-bis(2-pyridylmethylimino)pentane]鉄(II)錯体誘導体、pUC19プラスミドDNA、過酸化水素系で、一定時間経過後のDNAを電気泳動法によってForm I,Form II,Form IIIの生成比を求めた。錯体中に取り込まれたベンゾニトリルにフッ素を置換することによってDNA切断活性が向上することがわかった。もっとも活性の高かったペンタフルオロベンゾニトリルを置換した錯体のアセトニトリル溶液に50当量の過酸化水素を添加し、室温で吸収スペクトルを測定すると、587mmに極大吸収をもつ種が生成し、これは液体窒素温度でのESRスペクトルで、g値2.14、2.08,1.99を与え、鉄(III)-ヒドロペルオキシド種であることが判明した。これは、第6座へのヒドロペルオキシド配位に、新規5座配位子の第5配位子として導入されたニトリル類に電子吸引性の置換基が存在することが有利であることを示している。次に、複核鉄錯体を形成する配位子を研究計画に沿って、キシリルまたはメチレン鎖で架橋したアセチルアセトン誘導体、2-アミノメチルピリジンを用いてテンプレート反応によって調整を試みた。まず、複核錯体の原料となる配位子、3-(1,4-xylyl)-bis(pentane-2,4-dione)を合成したが、この方法ではテンプレート反応が円滑に進行しなかった。この原因はp-キシリル基の電子吸引効果のため、アセチルアセトンのカルボニル基の反応性が低下したためと考えている。これらの知見から鉄に安定に配位した錯体を形成させるためには、ピリジン基を複数配位させれば可能であると考え、現在新たな合成計画を立て、水溶液中で安定な鉄錯体を得るべく検討中である。
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