研究概要 |
糖鎖のクラスター効果によるガン細胞増殖抑制活性の向上を検討するために,糖鎖をリガンドとしたリポソーム形成の条件検討,糖質リガンドの効率的供給法の開発を行った。 リポソームを形成させる糖質リガンドとして,これまで試験した化合物の中で最もガン細胞増殖抑制活性が強いカコトリオース[α-L-rhamnopyranosyl-(1,4)-[α-L-rhamnopyranosyl-(1,2)]-β-D-glucopyranose]配糖体類を用いることとした。そこで,先ず,カコトリオース配糖体の簡易合成法を確立した。D-allyl-glucosideを出発原料とし,3,6-pivaloyl-allylglucosideを1工程で調整し,2当量のα-L-rhamnosyl trichloroimidateとシュミット法を用いてグリコシル化反応を行いカコトリオース部を合成した。次に,allyl基をtrichloroimidate基に変換し,アグリコン部とシュミット法でグリコシル化を行いカコトリオース配糖体を計6工程約20%の収率で合成した。この時,アグリコン部はホスファチジルコリンと疎水相互作用してリポソームを形成させるのに適し,かつ,生理作用を有する,ジオスゲニン,グリチルリチン酸,コレステロールを用いた。引き続き,ホスファチジルコリン(卵黄製)を用いて糖鎖が膜表面に突き出したリポソームの形成を検討した。最初に糖質リガンドとホスファチジルコリンで脂質薄膜を形成させ,これにカルボキシフルオレセイン水溶液を加え,ボルテックスミキサーを用いて水和させ多重膜リポソームを調整した。次に,窒素気流下,プローブ型ソニケーターを用い,25Wで断続的に超音波処理を行い1枚膜リポソームとした。最後に,ポリカーボネートフィルター(100nm)を用いて大きさを均一化したリポソームを調整した。
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