研究概要 |
平成11年度の研究実施結果について以下,述べる. 本年度は一般的なシスチンペプチド類を効率的に化学合成するための方法論を確立し,かつ位置選択的にジスルフィド結合形成を行うことができるようにTrpインドール環に最適な保護基を見いだすことを第一の目的に実験を行った。 1.Trpインドール環の保護基の候補として,Mts基,Hoc基およびDoc基を考えた.予備試験では,いずれの保護基もFmoc法で通常使用する条件下にて安定であり,さらに,鍵工程であるシリルクロリドースルホキシド反応の間も安定であった.また,これら保護基の選択的な脱保護試薬として予定していたトリフルオロメタンスルホン酸(TFMSA)で副反応を伴わず,簡単に除去することが可能であった。 2.次に,予備試験で判定した上述の3種類のTrpのインドール環の保護基のうち,どの保護基が最も有用であるか,ソマトスタチンを指標にし,実際にそれぞれソマトスタチンの合成を行った。その結果,Hoc基ではTFMSA系での脱保護反応が不完全であり,Mts基またはDoc基を場合では,各段階で満足できる純度あるいは収率で目的のソマトスタチンを得られることができた.さらに両者の比較すると,保護基除去の際にDoc基ではその選択的除去が4℃,30minといった温和な条件下で行える点,3-メチルインドールの添加が必要ない点から,Doc基が最も本合成法に適しているものと結論できた. 以上の結果から,来年度に関しては,位置選択的なジスルフィド結合形成反応に本方法論を適用し,複雑で複数のジスルフィド架橋を有するモデルペプチドの化学合成を種々行う予定である。
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