本年度は、HPLCによるラット脳内アナンダミドの高感度定量法の開発を行なった。 微量である脳内アナンダミドの検出には、高感度検出法が必要であるため、アナンダミドの水酸基を蛍光試薬DBD-COC1で誘導体化し、蛍光で検出することにした。アナンダミドの標準品を用いた実験では、検出限界が15fmolで高感度検出できたが、生体内には、DBD-COC1と反応する多くの内在性物質があるため、これらを効率よく除去しておく必要があった。それで、本実験に適切な前処理法を検討した。SD系雄性ラットの全脳をアセトン中でホモジナイズし、これにトルエンを加えて液-液抽出を行ない、この有機層を濃縮した。次いで、この残査を個相抽出(アミノプロピルシリカ)カートリッジによって精製し、アナンダミドを多く含む画方のみをDBD-COC1によって、誘導体化した。さらに、試薬の分解物などの來雑物を除くために、固相抽出(ODS)カートリッジで精製後、ODSカラムを接着したHPLCでの分離分析を試みたが、來雑ピークがアナンダミドの定量を妨害していた。そこで、異なる樹脂を充填した2種類のカラムを、六方バルブで接続したカラムスイッチングHPLCでの分離を試みた結果、ラット脳内からアナンダミドのピークを検出することができた(1.65pmol/g)。日内、日間変動は6.5%以内で、検出感度は約10fmolであり、良好であった。アナンダミド様作用の発現が報告されている加水分酵素阻害剤PMSFとアナンダミドの併用投与では、コントロールに比べて約16倍の上昇が見られた。また、PMSF単独投与の場合も、投与後60分までの経時的な増加が見られ、薬理効果との関連に興味が持たれた。現在、マイクロダイアリシスを用いて、その分泌機作を調べている。
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