DNA/金属錯体の特異的触媒活性を利用する多重情報型遺伝子センサーの開発

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11771416
• 研究機関: 埼玉工業大学
• 研究代表者: 長谷部 靖 埼玉工業大学, 工学部, 助教授 (20212144)
• キーワード: DNA / 遺伝子センサー / 水晶振動子 / サイクリックボルタンメトリー / DNA / 金属錯体 / 電気化学メディエーター

研究概要

今年度は、微小電極表面への2本鎖DNAの固定化法の検討とDNAに結合させた電気化学的活性種(遷移金属、電気化学メディエーター)の界面における電極触媒活性の評価を行った。
DNAの固定化は、5'-末端にSH基を導入したDNAを用いる自己集積法、ポリカチオンとのポリイオン複合体形成を利用したキャスト法、および電解重合包括法などにより、金電極基盤表面へのDNA固定化を試みた。水晶振動子マイクロバランス(QCM)法による共振周波数変化からDNA固定化量を算出し、各種DNA結合性薬物の結合活性を評価した。その結果、SH修飾法およびポリイオン複合体フィルム法で調整したDNAが各種インターカレーター薬物に対して特異的な結合活性を保持していることがわかった。円偏光二色性スペクトル(CD)により、ポリイオンキャストフィルム中のDNAは、ある程度のらせん構造を保持していることが明らかになった。次に固定化DNAに銅(II)イオンや鉄(II)イオンを結合させ、サイクリックボルタンメトリー(CV)によりDNAに結合した金属と電極との電子移動反応を測定した。しかし可逆的な応答が認められなかったため、金属イオンの代わりに電気化学的に活性なフェノチアジン系メディエーターをDNAに結合させ同様の測定を行った。その結果、可逆な酸化還元波が得られDNA塩基対間に結合したメディエーターが電極表面とのスムーズな電子移動反応を媒介することが実証できた。

研究成果

• [文献書誌] Y.Hasebe,et al: "Amperometric flow-type L-histidine sensor using immobilized galactose oxidase reactor, based on a novel catalytic activity induced by exogeous histidine"Sensors & Actuators B.. (印刷中). (2000)
• [文献書誌] 長谷部 靖ら: "DNA固定化カーボンフェルトをリアクターとするDNA結合性薬物のフロー型バイオセンシング"電気学会論文誌. 119-E. 571-575 (1999)
• [文献書誌] R.Matsukawa,Y.Hasebe,S.Uchiyama I.Karube et al.: "Eicosapenteanoic acid release from the red alga Pachymenniopsis lanceolata by enyzymatic degradation"Appl.Biochem.Biotech.. 80,. 141-150 (1999)
• [文献書誌] 長谷部 靖、内山 俊一: "還元剤が誘発する酵素増幅反応に基づく高感度バイオセンサー"日本化学会誌,. 431-439 (1999)
• [文献書誌] Y.Hasebe et al.: "Highly sensitive flow-detection of uric acid based on the intermediate regeneration of uricase"Analyst,. 123. 1775-1780 (1998)
• [文献書誌] Y.Hasebe et al.: "Enzyme-less vitamin C sensor using poly-L-histidine-Cu(II) complex as an alternative biocatalyst"Talanta,. 47. 1139-1147 (1998)
• [文献書誌] 内山俊一、長谷部靖ら: "分子認識を基礎とする分析化学"宣協社. 217 (1999)