研究概要 |
ヒト由来株化ニューロンモデル細胞SK-N-MCに低酸素ストレスを負荷すると,クロマチンの凝縮,DNA断片化,低DNA含量細胞や細胞膜上へのフォスファチジルセリンの露出を伴うアポトーシス様の死が起こることを見い出した.低酸素ストレスはミトコンドリアからのチトクロームcの漏出を惹起し,それに続いてカスパーゼ-3および-2の活性化を引き起こした.また,カスパーゼ-3の基質蛋白質であり,DNA断片化に関与するDNaseであるCADに結合して活性を制御しているinhibitor of CAD(ICAD)の分解も低酸素ストレスによって起こることが分かった. 一方,初代培養ラットグリア細胞においては同様のストレスを負荷しても顕著な細胞生存率の変化は認められなかった.この時,種々のシャペロン蛋白質が発現してくることが明らかとなった.その中でも熱ショック蛋白質(HSP)の一種であるHSP70が低酸素ストレスによって誘導された.低酸素によるHSP70発現の誘導機構を選択的阻害薬を用いて調べるたところ,p38 MAP kinaseの阻害薬であるSB203580が濃度依存的に抑制することが分かった.そこで,低酸素ストレスによってp38 MAPKが活性化されるか否か,ウェスタンブロット解析によって検討した.低酸素ストレスはHSP70発現に先んじて活性化した.したがって,グリア細胞では低酸素ストレス負荷に伴ってHSP70を含むストレス蛋白質を誘導することで,抵抗性を獲得している可能性が示唆された.
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