当該研究では容量性カルシウム流入経路として非選択的カチオンチャネルが関与しているかを検討し、さらにそれらの細胞機能における役割を明らかにすることを目的とした。本年度は胃酸分泌に関連する、および血管弛緩性一酸化窒素遊離に関与する容量性Ca^<2+>流入経路について解析し、その経路に作用する薬物の薬理作用を評価した。その成果を次の2点に要約した。(1)胃粘膜細胞における容量性カルシウム流入と胃酸分泌摘出胃標本において、タプシガージン、ジブチルヒドロキノンを用いて細胞内カルシウムストアの枯渇を起こさせた際の胃酸分泌を観察すると、わずかながら亢進が認められた。この酸分泌は細胞外液のカルシウムを除去すると消失した。さらに、胃粘膜細胞内カルシウム測定において、タプシガージン誘起のカルシウム流入が観察された。これらのことより、胃壁細胞における客量性カルシウム流入は胃酸分泌を引き起こす可能性が考えられた。2)血管弛緩を調節する一酸化窒素遊離に関与するカルシウム流入経路の解析:ラット大動脈標本を用いて、コリン作動性刺激による内皮依存性弛緩および内皮細胞カルシウム上昇に対して非選択的カチオンチャネル遮断薬は抑制を示した。また、漢薬附子の成分メサコニチンが血宮内皮細胞に作用して内皮依存性弛緩作用を示すこと、この反応が外液カルシウム依存性であることを見出した。唐辛子の辛味成分であるカプサイシンが非選択的カチオンチャネルであるバニロイド受容体に作用することが報告されたことから、血管内皮におけるカプサイシンの作用を検討した。その結果、カプサイシンも内皮依存性の血管弛緩作用を示すことが明らかとなった。これらのカルシウム流入経路については検討中である。
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