ストレス環境下で誘導されるプロテアソームの核内蓄積の機序を解明するため、今年度は、サブユニットに存在する核移行シグナル(NLS)の役割について焦点を当て研究し、以下の成果を得た。 1)プロテアソームのサブユニットの一つであるXAPC7のNLSに着目し、野生型(XAPC7-WT)及びNLSを欠失させた変異型XAPC7(XAPC7-dNLS)の発現ベクターを作製した。これらをヒト大腸がんHT-29細胞にトランスフェクションし、XAPC7-WT、XAPC7-dNLSを安定に発現する細胞を樹立した。 2)導入したXAPC7-WT、XAPC7-dNLSは、免疫沈降法によって20Sプロテアソームに取り込まれていることが確認された。 3)XAPC7-WT導入細胞では、非導入細胞と同様に、グルコース飢餓環境下でプロテアソームの核蓄積が誘導され、核内のプロテアソーム活性は約3.5倍に上昇した。一方XAPC7-dNLS導入細胞では、活性上昇は約2.3倍にとどまり、ストレスによる核蓄積が減弱していた。 以上の結果より、ストレス環境下でのプロテアソームの核蓄積において、XAPC7のNLSが重要な働きをすることが明らかになった。XAPC7以外にもNLSを持つサブユニットが3つ知られており、こうしたサブユニットのNLSについても今後検討していきたい。
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