骨内血管皮細胞はIL-11産生を介して骨転移巣における骨吸収並びに骨代償に関与していることが示唆されていた。しかし単離した破骨細胞にIL-11を添加してもその活性には変化が認められないことから、産生されたIL-11の標的細胞は骨芽細胞・骨血管内皮細胞などの骨細胞系自身であると考えられた。そこでまずレセプターの発現をフローサイトメーターにより検討した。 その結果IL-11レセプターを構成するα鎖・β鎖共に発現が認められた。様々な骨吸収性サイトカインによる骨吸収誘導活性の一部はプロスタグランジンの産生を介していることが報告されている。そこでマウス頭頂骨器官培養系にIL-11を添加したさいのPGE2の産出量をELISA法にて検討したところ、IL-11添加によりPGE2産生が増加することを見い出した。このPGE2産生ならびに骨吸収はCOX阻害剤であるインドメタシン添加により抑制されたことから、IL-11は間接的に骨芽細胞・骨血管内細胞に作用してCOXの発現を誘導すること、COXにより産生誘導されたプロスタグランジンが破骨細胞の形成・分化を誘導していることが明かとなった。一方IL-1は単核球・マクロファージ・骨芽細胞で産生され強力な骨吸収誘導活性を示す。IL-1は骨由来血管内皮細胞中のCOX-2mRNA・COX-2蛋白発現を誘導することがRT-PCR法・Western Blot法などで明らかとなった。またCOX-2プロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだレポータープラスミドを骨由来血管内皮細胞に一過性に遺伝子導入し、IL-1を添加したさいのルシフェラーゼ活性を検討すると、IL-1依存的な活性上昇が認められた。よってIL-11・IL-1共に骨内血管内皮細胞からのプロスタグランジン産生誘導を通じて骨吸収を誘導していることが示唆された。
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