塩基性FGF(bFGF/FGF-2)は血管新生、創傷治癒、神経細胞分化、血球分化などに関与することが知られているが、骨細胞系に対してもbFGFは骨芽細胞様細胞のの分化・増殖を促進することにより骨形成を誘導することが報告されている。一方、bFGFは骨吸収を誘導しうるという報告もなされている。bFGFは強力な血管新生誘導因子であることが知られているため、先に樹立した骨由来血管内皮細胞株に対するbFGFの作用を検討した。bFGFは、株化されているBM-3細胞だけでなく、マウスより分離した初代骨血管内皮細胞からのプロスタグランジンE2の産生を増加させることを見い出した。このプロスタグランジンE2の産生は、COX-2のmRNA・蛋白質の発現促進によるものであることを、RT-PCR法・Western blot法により明らかにした。またCOX-2プロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだレポータープラスミドを骨由来血管内皮細胞に一過性に遺伝子導入し、bFGFを添加したさいのルシフェラーゼ活性を検討すると、bFGF依存的な活性上昇が認められた。COXの阻害薬(インドメタシン、NS-398、デキサメタゾン)およびCOX-2antisense oligoにより、bFGF依存的なプロスタグランジンE2の産生を抑制することができた。IL-1やIL-11依存的な骨吸収においてもCOXの阻害により骨吸収が抑制されることを以前明らかにしてきたが、これらの知見を総合すると、骨転移抑制薬の標的分子としてCOX-2分子が有望である可能性が強く示唆された。
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