申請者は昨年度の本研究に於いて、細胞におけるADPリボシル化反応の機能を解明することを目的として、ADPリボシル化されたarginine残基からADPリボースを遊離する酵素(ADP-ribosylarginine glycohydrolase;ARGと略記)と相互作用する蛋白質のスクリーニングを行い、既存の蛋白質とは相同性を有さない新規遺伝子(ARGIP)のクローニングに成功した。本年度の研究に於いてはARGの周辺分子をさらに検索し以下の知見を得た。 1.これまで動物細胞にはARGは1種類しか報告されていなかったが、データベースを用いた検索及びマウスcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、ARGと相同性を有する2種類の新規ARG類似蛋白質(ARP1、ARP2)をクローニングした。2.ARP2には、ARGにおいて種間を越えてよく保存されている活性に重要なアミノ酸が存在したが、ARG1では別のアミノ酸に置き換わっていた。そこでリコンビナント体のARP1を大腸菌の発現系を用いて調整し脱ADPリボシル化活性を測定したところ、予想通り活性は検出されなかった。3.次にARP1の様々な点変異体を作製し酵素活性を持つようになるかを検討したところ、ARGで保存されているアミノ酸に置き換えた点変異体でも、酵素活性は検出できなかった。つまり脱ADPリボシル化活性にはこれまでに報告されているアミノ酸残基以外の部分も重要であることが示唆された。4.さらにARP1およびARP2は、先にクローニングしたARGと相互作用する分子であるARGIPとは相互作用しなかったことから、これら類似分子は細胞内でARGとは異なった局面で機能しているのではないかと推察された。
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