研究概要 |
強力なアポトーシス阻害作用を示すことを申請者が発見したDIDS(4,4'diisothiocyanostilbene-2,2'-disulfonic acid)の、ラット中大脳動脈結紮-再開通による虚血モデルにおけるcaspases依存性/非依存性の細胞死の検討を行った。血流再開通直後より6時間ごとに3回zDあるいは、DIDSを直接脳室内に投与し、24〜48時間後の梗塞領域をzD単独とDIDSの共存の場合で縮小を比較した。血流再開通の24時間後の梗塞巣は、zD,DIDSおよび、その併用で、ほとんど違いが見られなかった。48時間後の梗塞巣は、zD単独では20パーセント程度の拡大が見られたのに対し、DIDS単独、あるいは、zDとDIDSの併用では、24時間に比べてほとんど拡大が見られなかった。細胞内カテプシン量を測定したところ、血流再開24時間後からカテプシンDの有意な増加が認められたが、カテプシンBの変動はほとんど見られなかった。血流再開後ただちにzDの投与を開始し、18時間後にDIDSの投与を1回行ったところ、zD単独に比べて梗塞巣の縮小が認められた。このことから、DIDSはcaspase活性化による通常の細胞死の他に、カテプシン活性化を介する細胞死の分子機構も抑制する作用があることが判明した。なお、これらの薬物投与によって梗塞巣拡大を抑制した動物の学習行動の変化の研究は、次年度に行う予定である。
|