研究概要 |
本研究は、神経細胞の生存維持や機能に関わるニューロトロフィンである脳由来神経栄養因子(BDNF)とニューロトロフィン-3(NT-3)、pituitary adenylate cyclase activating polypeptide(PACAP)の遺伝子発現制御機構の解明、特に神経活動(脱分極)による制御に着目して解析した。本年度の研究実績は次の通りである。 1.BDNF遺伝子プロモーターの転写制御領域に結合する転写制御因子の同定 4つ存在するBDNF遺伝子プロモーターのうち、プロモーターI,IIは、電位依存性カルシウムチャネル(L-VDCC)経由のカルシウムシグナルに強く応答し、プロモーターIIIは、L-VDCCとグルタミン酸レセプターのNMDAレセプター、双方からのカルシウムシグナルに応答しうることを明らかにした。またプロモーターIは、異なる2つの領域に応答性エレメントが存在しており、下流領域内のcAMP responsive element(CRE)が応答性エレメントの一つであることがゲルシフト法、スーパーシフト法により明らかとなった。 2.BDNFとNT-3遺伝子プロモーター活性に関与するシグナル伝達分子の解析 BDNF遺伝子活性化には、mitogen activated protein kinase(MAPK)カスケードが関与していることが明らかとなった。NT-3遺伝子については現段階ではエレメントが特定できておらす、シグナル伝達分子についても不明である。 3.PACAP遺伝子構造と機能に関する成果 PACAP遺伝子が神経活動で活性化し、生成したPACAPが神経細胞に存在するPACAPレセプターに作用すること、そして神経細胞の生存を維持していることを明らかにした。また、異なるスプライシングによって新規のバリアントが神経細胞に存在していることが明らかとなった。
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