研究課題
インスリン受容体ファミリーに属する新規受容体Insulin receptor-relatedreceptor(IRR)は、未だリガンドが不明なオルファン受容体である。私は、当初からそのIRRの組織・細胞特異的な発現パターンに着目し、腎臓の皮質部集合管上皮細胞、胃のヒスタミン細胞、脳の前脳基底野コリン作動性神経細胞と、細胞特異的なIRRの発現を詳細に解析してきた。近年、インスリン分泌内分泌細胞である膵β細胞にもその発現を認め、β細胞の増殖シグナル、インスリン分泌シグナル、糖尿病といった観点から、インスリン受容体に構造類似性をもつものの、インスリンに親和性のないIRRに関する研究を進めてきた。今回、糖尿病モデル動物におけるIRRの発現において、いくつかの新しい知見を得たので報告する。まず、インスリン分泌不全により耐糖能異常をおこす、2型糖尿病(非肥満型NIDDM)モデルとしてのGK(Goto-Kakizaki)ラットにおけるIRRの発現を調べた。10週齢時、既に耐糖能異常の見られるGKラットと、コントロールのWistarラットとの比較において、膵ランゲルハンス島の免疫組織染色の結果、GKラットのβ細胞ではインスリンの発現量がかなり減少していたが、逆にIRRの発現は亢進していた。また、α細胞におけるグルカゴン発現量には、両者に有意な差は認められなかった。一方、肥満型糖尿病(NIDDM)モデルであるob/obマウスでは、5-6週齢時にはコントロールマウスと何ら変化はなかったものの、20週齢時には、明らかにランゲルハンス島の肥大化とIRR発現量の亢進が認められた。以上の結果をふまえて、現在膵β細胞の機能とIRRの生理機能を関連ずけて検討しているところである。
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