研究概要 |
麻酔性鎮痛薬による依存形成・禁断症状発現のメカニズムを分子レベルで明らかにするために、麻薬依存形成・禁断症状発現に深く関与していることが示唆されているオピオイドアゴニストの持続的処置によるアデニル酸シクラーゼ(AC)系の過感受性形成のメカニズムについて、クローン化オピオイド受容体を安定的に発現させた培養細胞を用いた検討を行った。クローン化μ、δ、κオピオイド受容体いずれのサブタイプを発現させたCHO細胞においても、アゴニスト持続的処置によりAC系の過感受性は、持続的処置するアゴニストに対して濃度依存的に、比較的短時間(数分〜数時間)のうちに形成された。このAC系の過感受性形成は蛋白質合成阻害薬cycloheximideおよび各種プロテインキナーゼ阻害薬(H7、H8、H89、staurosporine,calphostin C)の処置によって影響を受けなかったが、百日咳毒素の前処置により、完全に阻害された。また、アゴニストの急性処置によってGTPase活性の上昇が見られたが、AC系の過感受性形成時にGTPase活性に変化は見られなかった。さらに、G蛋白質αサブユニットα_<i2>とα_qとの各種キメラαサブユニットをオピオイド受容体と共発現させた検討から、AC系の過感受性形成にはα_<i2>のACとの連関に関する領域(Met^<244>-Asn^<331>)の存在とその機能保持が必要であることを明らかにした。また、オピオイド受容体と百日咳毒素非感受性α_zを共発現させた検討より、AC系の過感受性はα_zを介しても形成されることを明らかにした。
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