本年度では、腎局在性有機アニオントランスポータOAT-K1及びOAT-K2の安定発現系の構築を行い、両トランスポータの薬物認識特性並びに薬物輸送の方向性について検討を行った。 1)有機アニオントランスポータ安定発現細胞の確立 リン酸カルシウム共沈法によって、哺乳類発現ベクターに挿入したOAT-K1及びOAT-K2cDNAをイヌ腎由来培養上皮MDCKにトランスフェクションした。得られた細胞を用いてメトトレキセートなどのアニオン性薬物輸送の方向性及びノーザンブロッティング、ウエスタンブロッティングを行った結果、OAT-K1及びOAT-K2をそれぞれ発現する安定発現細胞MDCK-OAT-K1及びMDCK-OAT-K2を獲得した。本安定発現細胞においてOAT-K1及びOAT-K2は共に頂側膜に局在しており、ラット腎組織での局在と対応するものであった。 2)安定発現細胞によるOAT-K1及びOAT-K2の薬物認識特性 MDCK-OAT-K1またはMDCK-OAT-K2をディッシュ上または多孔性フィルター上に培養し、種々アニオン性化合物の輸送実験を行った。その結果、OAT-K1はアニオン性抗癌剤メトトレキセートや葉酸を強く認識すること、一方OAT-K2はメトトレキセートはじめタウロコール酸やプロスタグランジンE2など多様なアニオン認識特性を有することが判明した。さらに、両トランスポータは取り込み並びに排出という両方向性の輸送能を有していたことから、尿細管におけるアニオン性薬物の尿細管分泌に関わることが推察された。
|