メタロチオネイン(MT)は、下等生物から高等生物に至るまで自然界に広く存在することから、哺乳動物にとっても生命を維持する上で必須の分子であると考えられてきた。しかしながら最近、MT-IおよびIIを欠損したMTノックアウトマウス(MT-KOマウス)が作成され、本マウスが寿命を全うすることから、MTは生体にとって何らかの緊急事態が起こった際に必要不可欠な分子であると考えられるようになった。そこで本研究では、ウイルスや寄生虫など外来生物から攻撃の際に機能する免疫系に注目し、MTの免疫系での役割についてMT-KOマウスを用いて解析した。その結果、MT-KOマウスは野生型マウスと比較して、胸線リンパ球、脾臓リンパ球、リンパ節細胞のpopulationには変化は認められず、また血中免疫グロブリンの量やアイソタイプにも変化が認められなかった。またT細胞の増殖反応やB細胞増殖反応にも変化は認められず、さらにB細胞増殖時に誘導される表面分子にも差は認められなかった。さらに脾臓の抗原提示細胞群をCD40リガンドで刺激した際のIL-12産生にも影響は認められなかった。しかしチオグリコレート誘発腹腔浸潤マクロファージをリポポリサッカライドで刺激した際のTNF-α産生は、MT-KOマウスにおいて低下していた。またT細胞、B細胞増殖時にCdなどの重金属を作用させると増殖反応が抑制されることから、免疫反応時に重金属に暴露された際にはMTがぞの防御に必要であることが明らかとなった。今後は、TNF-α産生がなぜ低下しているのかについて分子レベルで解析を行うとともに、in vivoにおけるMTの意義について検討を行う予定である。
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