前年度ラットメサンギウム細胞において少なくともP2Y_2、P2Y_4およびP2X_7受容体mRNAの発現が認められ、P2YアゴニストUTP刺激は細胞増殖能の促進をP2X_7受容体アゴニスト2′-&3′-O-(4-benzoyl-benzoyl)-ATP(BzATP)刺激はアポトーシスによる細胞死を誘導することを明らかにした。しかしながら、メサンギウム細胞を用いてはP2X_7受容体活性化のみの反応をさらに解析することが困難であったので、今年度はP2X_7受容体活性化による細胞死の解析系を確立するため、内在性P2受容体を発現していないトリ白血病ウイルス感染ニワトリBリンパ細胞株DT40にラットP2X7 cDNAを安定発現させたクローン細胞を作成し、この細胞株がP2X_7受容体活性化による細胞死の解析系に利用できるかどうか在検討した。 発現させたP2X_7受容体がP2X_7受容体としての機能を有するか検討したところ、BzATP処置による細胞死の誘導とP2X_7アンタゴニストoxidized ATPならびに細胞外Mg^<2+>添加による細胞死の抑制が観察され、発現させたP2X_7受容体は従来報告されているP2X_7受容体の特性を持つことが明らかとなった。さらに、ラットメサンギウム細胞では観察できなかった内因性リガンドATPによる細胞死も観察できた。 以上から、P2X_7受容体活性化のみの反応を解析する系を確立することができたと考えられる。本研究計画から得られた結果はP2X_7受容体が腎糸球体メサンギウム細胞においてdeath receptorとして働くことを示している。今後、この系を用いた細胞死の誘導機構の解析に加え得て糸球体メサンギウム細胞における受容体の発現制御機構の解析も進めてP2X_7受容体の生理的・病理的な役割を明らかにしていきたい。
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