研究概要 |
抵抗血管の一つであるウサギ腸間膜動脈内皮細胞の電気生理学的性質について検討し以下の結果を得た。尚この成果は英国薬理学雑誌に発表済である(British Journal of Pharmacology,128巻,p1491-1496,1999)。 ウサギ腸間膜動脈内皮細胞に対するKチャネル開口薬(レブクロマカリムやニコランジルなどのATP感受性Kチャネル開口薬)の作用について、単一血管内皮細胞標本と血管組織存在内皮細胞標本を用いて検討したところ、Kチャネル開口薬は単一血管内皮細胞には無効であるが、血管組織存在内皮細胞では、著名な過分極反応を惹起することが明らかとなった。さらにこの過分極反応は、血管平滑筋の過分極が、血管・内皮間のギャップ結合を介して内皮細胞に伝播することで生じることを明らかにした。本研究において、血管平滑筋の膜電位が内皮細胞の静止膜電位を調整し、内皮細胞からの一酸化窒素などの生理活性物質の遊離を制御している可能性を初めて示すことができた。 以上の知見を基に平成12年度では、自然発生高血圧ラットや糖尿病ラット、あるいはコレルテロール負荷ウサギなどの病態モデル動物を用いて、抵抗血管内皮細胞の電気生理学的物質、特に血管平滑筋と内皮細胞との電気信号の伝播において、対照動物と差があるかどうか検討していく予定である。また抵抗血管内皮細胞に、ATP感受性KチャネルあるいはKチャネル開口薬のターゲットであるスルホニルウレア受容体が発現しているかどうか、分子生物学的手法を用いて検討する予定である。
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