動脈硬化およびII型糖尿病傾向を示すC57BL/6マウスを用いて、長期に渡る各種脂肪酸添加食が寿命と脂質代謝に及ぼす影響を調べた。 300匹の17週齢の雌性C57BL/6マウスを60匹ごとの5群に分割し、それぞれの群のマウスに市販の飼育用飼料(3%の脂肪酸を含有)に10%(w/w)のラード、リノール酸含有ベニバナ油、α-リノレン酸含有シソ油、菜種油、およびドコサヘキサエン酸/大豆油混合(1:9)をそれぞれ添加した5種類の飼料を与え、寿命を観察した。飼育を開始してから約1年後に一部のマウスを用いて、尿中タンパク量、肝臓および血清中の脂質含量を測定した。 各食餌群のマウスの平均生存日数はドコサヘキサエン酸/大豆油食群で753日であり、菜種油群で712日、シソ油群で701日、ベニバナ油群で689日、ラード群で672日群であった。ドコサヘキサエン酸/大豆油食群のマウスの平均生存日数はベニバナ油およびラード食群のそれに比べて、統計学的に有意に長かった。尿タンパク量は菜種油群において、他の食事群に比べて多かった。血清中の脂質(トリグリセリド、リン脂質)量は各食事群間で違いはなかったが、肝臓中のトリグリセリド量が菜種油群で、他の食事群よりも高かった。血清総コレステロール量は、ドコサヘキサエン酸/大豆油食群とシソ油食群で他の食餌群に比べて低かった。 ドコサヘキサエン酸の摂取によるC57BL/6マウスにおける寿命の延長効果が明らかとなった。このようなドコサヘキサエン酸の有効性は、その脂質代謝異常とインスリン感受性低下の改善に起因する可能が示唆された。
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