昨年度において動脈硬化およびII型糖尿病傾向を示すC57BL/6マウスを用いて、長期に渡る各種脂肪酸添加食の給餌が平均生存日数と脂質代謝に及ぼす影響を調べた。その結果、ドコサヘキサエン酸/大豆油食群のマウスの平均生存日数はベニバナ油およびラード食群のそれに比べて、統計学的に有意に長いことがわかった。また血清総コレステロール量は、ドコサヘキサエン酸/大豆油食群で他の食餌群に比べて低かった。そこでコレステロール生合成の律速段階を触媒するHMG-CoA還元酵素の肝臓における活性を比較したところ、ドコサヘキサエン酸/大豆油食群で他の食餌群に比べて低いことがわかった。すなわち、ドコサヘキサエン酸/大豆油食の給餌による血清中のコレステロール低下作用は、肝臓のHMG-CoA還元酵素の活性の低下に起因するもとのと推察できる。 一方、一般には糖尿病傾向を示さないとされるICR系マウスに低用量のストレプトゾトシンを投与すると、緩和に高血糖が進展するII型糖尿病の症状がみられることが知られている。この低用量ストレプトゾトシンモデルマウスにパーム油を添加した高脂肪食(20%、w/w)を与えると、低脂肪食群に比べて高血糖の進展が促進された。しかしながらパーム油のかわりにドコサヘキサエン酸を添加した高脂肪食を給餌したところ、低用量ストレプトゾトシンによる高血糖の進展は抑えられる傾向にあった。この結果から、II型糖尿病の進行に対してドコサヘキサエン酸の給餌は防御的に働きうることが示唆された。 以上の結果から、ドコサヘキサエン酸がコレステロール生合成活性を低下させること、またII型糖尿病の進展を抑えることがC57BL/6マウスにおける寿命の延長効果に関わっていることが示唆された。
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