TGFβと過酸化水素で誘導されるhic-5遺伝子は、細胞接着斑蛋白質をコードし、Hic-5蛋白質は接着斑で多くのシグナル分子と複合体を形成している。hic-5の発現をマウス各種組織のin situ hybridization法で解析した結果、脾臓の白脾髄周辺で高い発現が認められた。この部分にはマクロファージが多いとの報告があるため、マウス腹腔から分離した細胞を用い、マクロファージ特異的マーカーと共に免疫染色を行ったところ、Hic-5陽性細胞はマクロファージとは異なり、繊維芽細胞であることが明らかとなった。また、繊維芽細胞の細胞接着斑にビンキュリンやFAKと複合体を形成して存在する。そこで、Hic-5蛋白質の細胞接着における機能を解析するため、マウス繊維芽細胞(NlH3T3)ヘのhic-5発現ベクター導入法を用いてフィブロネクチン上への細胞接着の変化を検討した。その結果、hic-5の強制発現は基質への初期の細胞接着を阻害したが、Hic-5の類似蛋白質であるパキシリンの強制発現ではそのような効果は見られなかった。また、hic-5の各種欠損変異体を作成し、それらの発現による細胞接着阻害効果を比較したところ、Nー末端の3個のLD領域のうち3番目のLDが必要であることが明らかとなった。この領域にはチロシンキナーゼFAKが結合するが、FAK-/-細胞でhic-5の効果が見られなくなることからHic-5はFAKとの結合を介して細胞接着を調節していると考えられる。
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