研究概要 |
我々はウリジンN3位置換体が催眠作用を有し、その発現機構がバルビツレート、ベンゾジアゼピン類とは異なることを明らかにしている。そこで、本研究はピリミジンヌクレオシド誘導体の中枢抑制機構解明を目的として、ウリジン誘導体の構造活性相関及び受容体の精製を行い、以下の新知見を得た。 ウリジン誘導体の合成及び薬理作用 ウリジンとは糖2'位の水酸基の配位を異にするアラビノフラノシルウラシルのN3位に置換基を導入した誘導体を合成し、催眠作用を検討した結果、N3-o-メトキシフェナシルアラビノフラノシルウラシルに強い催眠作用が確認され、オキソピリミジンヌクレオシドN3位におけるフェナシル関連置換基の重要性が再確認された。さらに、フェナシル基にニトロ基を有する置換基をウリジンN3位に導入したN3-p-ニトロフェナシルウリジンがマウスにおいて痙攣を誘発し、中枢興奮作用を有することも明らかとなった。いずれの誘導体もフェナシル基上のo,m,p位の各異性体間で薬理作用の強さが異なることから、作用発現に対してフェナシル部位における立体特異性があることが示唆された。また、Tail pintch,Hot plate,酢酸writhing反応による鎮痛作用の検定を行った結果、N3-フェナシルウリジン及びN3-ベンジルウリジンに鎮痛作用が認められた。本結果は、核酸誘導体の有する新たな中枢作用すなわち鎮痛薬としてこれら誘導体が医薬品として開発可能であることを示すものである。 ウリジン受容体の精製 ウシ視床より常法に従いシナプス膜を調製、1%3-[3-(cholamidopropyl)-dimethylammonio]-]1-propane sulfonate(CHAPS)で可溶化した。ウシ脳シナプス膜可溶化画分上清はSepharose 4Bカラムで溶出した。続いて液体等電点電気泳動により分子量29kdのほぼ単一な蛋白質にまで分離・精製することができた。本受容体蛋白質は[3H]N3-フェナシルウリジンと結合し、その結合は各種ウリジン誘導体により阻害された。なお、誘導体の結合阻害度は催眠作用と相関性が確認されていることより、本ウリジン受容体が催眠機構に関与していることが示唆された。
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