研究概要 |
代表者の所属する研究グループは,グリア細胞の機能解明を通して脳機能を追究する目的で,脳内の主要グリア細胞であるアストロサイトの病態的意義に関して一連の研究を行ってきた,その過程において,アストロサイトにおけるNa^+-Ca^<2+>交換系の存在を見いだし(Glia,1994),また,インビトロ虚血-再灌流モデルの一つであるCa^<2+>再灌流において,本交換系を介するCa^<2+>過流入をトリガーとする遅発性グリア細胞死すなわちCa^<2+>が発現することを初めて明らかにした(Eur.J.Neurosci.,1996).さらに最近,本遅発性グリア細胞死の発現に活性酸素ならびにアポトーシスが関与することを見いだした.本年度は,これらの成果を基にし,Ca^<2+>再灌流ならびに活性酸素によるグリア細胞のアポトーシスのシグナルカスケード,並びにその制御機構についてインビトロの系で生化学的手法を用いて検討した.Ca^<2+>再灌流による活性酸素の産生増加に対して,カルパイン阻害薬,カタラーゼおよびアロプリノールが抑制効果を示した.一方,キサンチンは活性酸素産生を促進した.過酸化水素への短時間曝露およびCa^<2+>再灌流により認められるアポトーシスに対して,フェナントロリン,FK-506,カスパーゼ3阻害薬Ac-DMQD-CHO,カテプシンD阻害薬ペプスタチンAおよびNF-κB阻害薬PDCが保護効果を示した.Ac-DMQD-CHOによる保護効果は,カテプシンB阻害薬CA074Me共存下消失し,さらにカテプシンD阻害薬ペプスタチンAを添加すると回復した.これらの成績は,Ca^<2+>再灌流による遅発性アポトーシスの発現において,(1)カルパイン〜キサンチンオキシダーゼ系活性化に伴う活性酸素の産生,ならびに(2)活性酸素によるカテプシンD〜カスパーゼ3系およびカルシニューリン〜NF-κB系の活性化が関与することを示唆しており,現在その詳細について分子生物学的手法を用いて解析している.また,本年度の成果について,第42回日本神経化学会ならびに雑誌論文(Eur.J.Neurosci.,1999など)にて発表した.
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