硫酸化グリコサミノグリカンは共通の糖-タンパク質結合領域を介してコアタンパク質に共有結合し、ほとんど全ての細胞表面や細胞外マトリックスに存在している。我々がクローニングしたグルクロン酸転移酵素Iは、この共通の糖-タンパク質結合領域の生合成に関与するものであるため、この酵素の発現がコンドロイチン硫酸やペハラン硫酸などすべてのグリコサミノグリカンの生合成を制御している可能性が考えられた。そこで本年度は、マウスのグルクロン酸転移酵素Iのプロモーター領域を含む遺伝子構造を明らかにし、さらに組織での発現部位や時期などを解析することによりグリコサミノグリカンの生合成及び発現制御メカニズムの解明を試みた。 我々は、グリコサミノグリカン生合成に関与するグルクロン酸転移酵素I(GlcAT-I)のcDNAクローンをヒト胎盤より得ているので、これを用いてヒト組織でのGlcAT-ImRNAの発現を調べた。また、入手困難なヒト組織が存在することと、生体内でのグリコサミノグリカンの機能を知るためのGlcAT-I遺伝子のノックアウトマウス作製を長期的目標として、ヒトGlcAT-IのcDNAの塩基配列を用いてEST(Expressed Sequence Tags)データーベースを検索し、マウスGlcAT-IのcDNAをクローニングし、マウス組織でのGlcAT-ImRNAの発現をNorthern blottingやIn situ hybridization法を用いて調べた。そして、マウスGlcAT-IのcDNAをプローブとして、マウス129SVJ遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることにより、マウスGlcAT-Iの遺伝子を単離し、その構造を明らかにした。
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