研究概要 |
【目的】昨年度の研究により,ビタミンD受容体遺伝子欠損マウス(VDRKO)は腎臓1α水酸化酵素を強く誘導しており,PTH産生も血中カルシウム濃度の是正だけでは改善されないことを確認した。本年度はD代謝及びPTH産生におけるVDRの機能を胎仔期から詳細に検討し、Ca代謝疾患の病態との関連について考察した。【研究方法及び結果】1)胎仔期の血中PTH濃度と腎臓1α位水酸化酵素遺伝子(CYP27B1)発現におけるVDRの役割:VDRKOマウスの血中PTH濃度は胎生16日齢、生後0日齢のいずれにおいても野生型に比べて高いことを確認した。しかし、胎仔期のVDRKOマウスCYP27B1発現量は野生型と同等であった。VDRKO、野生型マウスともにCYP27B1発現量は出生を境に急上昇した。2)成長期の野生型マウスとVDRKOマウスにおける血中PTH濃度-CYP27B1発現量の相関関係:7週齢の野生型マウスにPTHを2-40μg/μL/hの用量で4日間持続投与した。このマウスから得た血中PTH濃度-CYP27B1発現量の相関図とVDRKOマウスのそれと比較した結果、VDRKOマウスのCYP27B1発現量は血中PTH濃度が50-500pg/mLの範囲では野生型に比べて高く、1000pg/mL以上では野生型と同等であることを確認した。【考察及び結論】前述の結果から、PTH産生に対するVDRの抑制機能は出生前から働いており、VDRがPTH産生あるいは副甲状腺過形成に関与することを強く示唆した。また、副甲状腺機能亢進症の治療において副甲状腺VDRの発現量が重要な鍵を握ることを示唆する結果であった。一方、成長期でみられるVDRの腎臓CYP27B1に対する抑制機能は、血中PTH濃度が比較的低濃度域にあるときのみに認められることが明らかになった。
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