本申請研究の目的は、ビスベンジルイソキノリン(BBIQ)の生理活性発現のメカニズムを解明する上で、コンフォメーションの平衡状態を測定する手法の汎用性を高めつつ適用することによって、有用な新規の「動的構造-活性」相関を実証することである。この目的で、(1)BBIQ誘導体の構造的なバラエティを十分に考慮したシリーズを用いて、ラジカル消去活性を一定の条件にて測定した。また、(2)これらの立体構造を広範囲にわたるコンフォメーション探索を計算すると同時に、溶液状態における立体構造の特性をNMRを用いて測定し、実証的な分子の動的構造の解析手法を開発した。 BBIQ誘導体3種類のラジカル消去活性とそれらの構造解析から、反応メカニズムにたいしてテトラヒドロイソキノリン(THIQ)部分構造の立体的特性が重要な役割を有していることを報告した。また、構造的特性の測定においては、BBIQ誘導体のコンフォメーションについて、AMBER99力場を用いて網羅的に探索するプログラムMGPを開発した。その計算結果から、大環状構造のラジカル反応活性中心と推定されたTHIQ部分構造に対して及ぼす影響として、エカトリアル-アキシャル変換の発生頻度に極端な相違が見られ、これがラジカル消去反応において必要となる構造変化の許容度と関連づけられると結論づけられた。
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