発生過程におけるへパラン硫酸(HS)の構造と機能変化を見るために、発生の研究に最もよく利用されているアフリカツメガエルの胚のHSを分析した。受精卵自身の遺伝子から転写が始まる時期(MBT)よりも前の胚(preMBT胚、これは母体由来のHSを調べることになる)、受精卵が分化を始め形態形成が行なわれる時期の胚(神経胚)、分化がさらに進み各器官や臓器が形成されてくる過程の胚(尾芽胚)を用いて実験を行った。まず、以上の3種の胚のホモジェネートについて、脱脂、タンパク質分解、陰イオン交換クロマトグラフィーなどの手法をもちいて硫酸化グリコサミノグリカンを精製した。これらの画分について、酵素消化と蛍光標識を組みあわせた方法で微量分析を行い、それぞれの二糖組成を決定した。特徴的な二糖組成の変化が観察された。 ガン細胞の形態の変化に伴って細胞表面のヘパラン硫酸の構造や、細胞増殖・分化因子との結合能が変化することが予想されているので、細胞の形態形成に伴うHSの変化についても研究した。 ECV304細胞は、I型コラーゲンの添加によってコード様構造を形成するが、この形態の変化に伴う細胞表面のHSの変化について解析した。細胞の培養培地中に[^3H]グルコサミンを添加して代謝標識し、細胞表面より前述と同様の方法を用いてHSを単離し、二糖組成を決定した。また、この細胞の細胞表面に存在する主要なHSプロテオグリカンがシンデカンであることも、抗体を用いて同定した。さらに、これらのHSとアンジオモジュリンという血管新生調節因子との相互作用についても調べた。これらの研究成果は論文として報告した。 我々は上記以外に、HS中に存在する特定の糖鎖配列を解明するための基礎的な情報を収集するために、様々な硫酸化オリゴ糖を調製して構造解析し、また、HS分解酵素の詳細な基質特異性についても研究し、それぞれ論文として成果を報告した。
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