平成十一年度にヒト膀胱癌細胞株ECV-304の細胞表面より単離した[^3H]ヘパラン硫酸(HS)と血管新生調節因子アンジオモジュリンとの相互作用について、ニトロセルロース膜を用いた結合実験を行ない、実際に結合しうることを確認した。また、標識していない各種グリコサミノグリカン鎖やオリゴ糖を同時に加えて阻害実験を行ない、各試料の阻害能の強さを比較し、HSとアンジオモジュリンとの相互作用に必要なHS上の硫酸化構造について情報を得た。この研究成果については、論文として報告した。また、ECV-304細胞の血管様構造の形成に伴って、ECV-304細胞の産生するHSのアンジオモジュリンへの結合能の変化についても調べた。その結果、血管様構造を形成する前のECV-304細胞が産生するHSの方が、血管様構造を形成した後のECV-304細胞が産生するHSよりも、アンジオモジュリンへ結合しやすいことが判明した。このことは、両者の相互作用が血管様構造形成の初期の段階で重要であることを示唆していると考えられる。 アンジオモジュリンとHSの相互作用解析については、表面プラズモン共鳴を利用したバイオセンサーを用いて、より反応速度論的な解析も行った。同様の解析は、アンジオモジュリンに留まらず、他の幾つかのヘパリン結合性細胞増殖・分化因子(ヘパリン結合性EGF様増殖因子、ミッドカインなど)についても行った。 我々は上記以外に、HSのコアタンパク質への結合領域の構造を微量で解析する方法を開発し、論文としてその成果を発表した。この研究成果は、微量しか得られないアフリカツメガエルの胚のHSや培養細胞の産生するHSの構造解析を行う上で、有効な手段になりうるものと思われる。
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