研究概要 |
本年度はまず、グリア細胞の単独培養系において低線量放射線の細胞増殖に及ぼす影響について検討するため、若齢ラット及び老齢ラットの海馬からグリア細胞を培養し、細胞増殖における低線量放射線適応応答について検討した。 細胞はラット海馬より培養し、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)の抗体を用いて免疫染色し、アストロサイトであることを確認した。放射線はx-線を用い、低線量照射後3時間後に高線量追加照射を行った。細胞はx-線を照射してから2日後にコールターカウンターを用いて細胞数を測定し、細胞増殖を調べた。プロテインキナーゼC(PKC)の阻害剤としてcalphostin C、chelerythrine chloride、活性化剤としてfarnesyl thiotrizole(FTT)、1,2-dioctanoyl-sn-glycerol(DOG)を用いた。DNA-依存性プロテインキナーゼ(DNAPK)あるいはフォスファチジルイノシトール-3-キナーゼ(PI3K)の阻害剤として、wortmannin及びLY294002を用いた。 低線量x線として10cGy、追加照射として2Gyを照射したとき、若齢ラットのグリア細胞で放射線適応応答が認められた。老齢ラットのグリア細胞では、この条件では放射線適応応答は認められなかった。この結果から、低線量放射線に対する細胞応答は、老化により変化する可能性が示唆された。 また、分子機構について検討するため、種々の阻害剤、活性化剤を用いて添加効果を調べた結果、PKC、DNAPK、PI3K等が細胞内情報伝達に関与している可能性が示唆された。さらに、来年度、神経細胞との混合培養系で実験を進めるため、今年度は神経細胞の培養系も確立した。
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