研究概要 |
多くの植物種に広く分布するフラボノイド、アントシアニン、カテキン等のポリフェノール類は、強力な抗酸化活性をもち、活性酸素や種々のオキシダントで引き起こされる疾病を予防する機能を有することが、明らかにされ注目されている。このような抗酸化物質を豊富に含む植物を摂取することで酸化に起因する疾病を予防することが期待される。そこで本研究では、抗酸化物質生産能力の改良を目的とした遺伝子エンジニアリングに用いるための制御因子の探索と解析を行った。植物におけるアントシアニン生合成の制御には、転写制御因子であるMycホモログ、Mybホモログならびに機能の詳細の不明な制御因子WD40因子が関与することが知られている。本研究では、全草においてアントシアニン生産の高発現しているアカジソのように植物からアントシアニン生合成の制御因子を単離し、分子エンジニアリングの材料として用いることを目指して、(1)成分変種特異的に発現する新規Myc遺伝子の探索、(2)アカジソからのWD40ホモログ遺伝子の単離とコードされるタンパク質の機能解析を行った。 アカジソとアオジソのmRNAについてディファレンシャルディスプレイを行い、アカジソ特異的に増幅されたPCR産物をプローブとして、アカジソとアオジソの葉の全RNAに対してノーザン解析を行い、2クローンのアカジソ特異的増幅フラグメント(F5RA1-16,F3G1)を得た。シークエンス解析の結果、F3G1は新規であり、F5RA1-16はジヒドロフラボノール4-還元酵素(DFR)cDNAと一致した。さらにF3G1をプローブとしてアカジソ葉cDNAライブラリーをスクリーニングし、全長cDNAを単離した。その結果、F3G1はこれまでに単離されたアントシアニン生合成を制御するMyc様遺伝子と相同性があることが示された。また、アカジソ葉のノーザン解析から、F3G1遺伝子は、アントシアニン生合成遺伝子と同様に光照射によって経時的に誘導されることが示された。このようにF3G1がアントシアニン生合成の発現制御に関与していることが示唆された。また、アカジソから新規WD因子遺伝子を単離し、機能解析を行った。
|