リポ多糖(LPS)刺激によるマクロファージ活性化にはToll-like Receptor(TLR)4が関わること、及びTLR4のLPS感受性にはMD-2との複合体形成が重要であることが近年明らかにされている。抗癌物質タキソールは構造的にはLPSと全く異なっているが、マウスのマクロファージに対してLPS様活性を示すことが知られている。そこでタキソールの刺激がTLR4あるいはTLR4・MD-2複合体を介して細胞内に伝えられるか検討した。マウスプロBcell lineであるBa/F3にマウスTLR4とマウスMD-2を共発現させた場合にタキソール刺激によるNFκB活性化が認められた。TLR4のみを発現させた場合は活性化は極めて弱かった。またMD-2と細胞内領域を欠失させたTLR4を共発現させた場合はNFκB活性化は認められなかった。LPS刺激の場合と同じくTLR4とMD-2の両方の発現がNFκBの活性化に必要であることがわかった。さらに興味深いことにヒトTLR4とヒトMD-2を共発現させた場合にはLPS刺激とは異なりタキソール刺激によるNFκBの活性化は見られなかった。以上の結果からTLR4・MD2複合体がLPSだけでなくタキソールのシグナルも伝えることが明らかとなった。タキソールはマウスではLPS様活性を示すがヒトではLPS様活性を示さないことが知られている。TLR4・MD2複合体のタキソール感受性が種差の原因となっている可能性が考えられた。
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