本年度の研究実施計画に基づき、下記の研究成果を得た。 1医療スタッフが、実際の臨床場面で医学知識を必要とする状況のモデリング 医療スタッフが臨床場面で医学知識を必要とする状況のユースケースに基づき分析を行った。診療情報システムと電子医学教科書間で連携するための電子医学教科書側に必要なサービスとして、医学文書提供サービス、医学文書検索サービス、管理サービスの三つのサービスを定義し、それぞれに必要なメソッドを定義した。 2新たな医学知識提供システムの設計 診療端末から容易に電子医学教科書にアクセスする方法として、診療端末に保存されている項目と電子教科書の本文を関連づける方法以外に、放射線レポートや病理レポートなど自由文で書かれた文書の中の医学用語と電子医学教科書を連携する方法の開発を行った。 自由文中の医学用語の表現は多様であるため、まず7万語の医学用語のシソーラスを開発し、このシソーラスを用いて、(1)文書内から直接用語を切り出し、シソーラスとマッチングする方法、(2)シソーラスに含まれるすべての用語で、文書内の用語とマッチングする方法の二つの方法について、関連情報生成速度の特性の違いを検証した。その結果、3000文字以下の短い文章であれば、前者の方法がより高速に関連情報を生成可能であり、比較的短い文章で構成される、放射線レポートや病理レポート等の場合には、前者の方がより有効であることが示唆された(文献1)。 3設計に基づいたプロトタイプの開発 上記の方法に基づき、ユーザが自由に入力する文書に対して、リアルタイムに電子医学教科書との関連情報を生成する手法を応用した電子医学教科書を開発した(図書1)。このシステムを診療端末に組み込み、実際の放射線レポートや病理レポートに応用することは今後の課題である。
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