研究概要 |
医療へのニーズが多様化するなか、医療者が患者と適切なコミュニケーションを取り、その心理内界までふまえたケアを提供するためには、病室、デイルーム、自宅の病床などいわゆるベッドサイドにおけるコミュニケーションやカウンセリング技法の整理・体系化、およびその技法を多様な職種が共有できるような教育・研修モデルの構築が求められる。 そこで平成11年度、臨床心理士である研究代表者を中心に臨床事例を集積し、(1)面接の組み立て方・契約のしかた、(2)面接時の位置関係、(3)非言語的コミュニケーションへの注目、(4)基礎的面接技法、(5)転移-逆転移、(6)ベッドサイド・カウンセリングの適用とその限界などを中心に、研修用テキストを作成した。 平成12年度には、上記テキストを用いて研修会を実施し、その効果を測定した。研修会は平成12年7月、看護系大学3年生(臨地実習済み)71名を対象に実施し、質問紙によって(1)ベッドサイド・カウンセリングへの関心度、(2)ベッドサイド・カウンセリングで不安に感じること3つ(自由記述)、(3)(2)に対する研修前の不安度(7段階評定)、(4)(2)に対する研修後の不安度を測定した。その結果、(1)の関心度は高く(得点範囲1-5でX=4.45;最小値4,最大値5)、(3)の研修前不安点合計(X=15.39,SD=2.15)が研修後はX=13.09(SD=2.63)と有意に低下した(t=9.68,df=70,p<.01)。したがって、本研究で作成したカリキュラムは相応の効果を有するものと推察される。また(2)の不安内容を7項目に分類した結果、もっとも多くあげられたのが「面接技法利用上の不安」(回答数59/213;27.7%)、「面接経過のマネジメント」(39;18.3%)、「医療者側の具体的不安」、「経験不足などその他」(36;16.9%)などであった。今後はこれらに重点を置いたカリキュラム開発が求められよう。
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