I.突然変異誘導制御因子に対するモノクローナル抗体の作製 これまでの我々の解析により、突然変異誘導制御と、変異原処理による細胞のプロテアーゼ誘導とに相関があることが知られている。この点に注目し、突然変異誘導制御用因子を含むと予想される培養ヒト細胞の粗抽出液と、その突然変異誘導制御因子に対するモノクローナル抗体を反応させることとした。抗体を作製するために、突然変異を高頻度で誘導可能なRSa細胞とその派生株で変異誘導が起こりにくいUV^r-1細胞株を、サブトラクティブ免疫法にてBALB/cマウスに免疫した。免疫後、リンパ節細胞をマウスミエローマ細胞と細胞融合し、抗体産生ハイブリドーマを得た。形成された抗原抗体複合物質を96穴プレート上に結合させた。次に、プロテアーゼに対する蛍光人工基質を加え、37℃でインキュベートした。蛍光強度が増加した35クローンの抗体に関して解析を進めている。 II.突然変異促進因子の遺伝子クローニング 結節性硬化症(TS)の患者血清中に変異の誘導を促進する活性があることを見出している。更に、ヒトインターフェロンβに対する抗体YSB-1はこの活性を抑制することが明かとなった。一方、YSB-2抗体はヒトインターフェロンβには反応するが、TS由来血清因子には反応しないことが分った。この2種類の抗体の反応性の差に着目し、TS由来血清因子のcDNAを検索することとした。TS患者由来細胞よりmRNAを抽出し、λファージcDNA libraryを作製した。このcDNA libraryからYSB-1に反応するがYSB-2には反応しないものを選別した。現在までに、DNA修復に関与する分子等、数種の既知および未知の遺伝子類が得られている。今後、これら遺伝子産物の突然変異誘導調節との関連を検証して行く。
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