研究概要 |
SRY遺伝子は哺乳類や有袋類において未分化性腺を精巣に誘導するための鍵を握る遺伝子である.SRYはその構造から機能的下流の遺伝子の発現を調節することでその機能を発揮すると考えられる.しかしながら,ヒトSRYの発現様式が時期特異的,組織特異的なためにSRYの機能を探る適切な実験系の構築が難しく,その機能的下流の遺伝子は現在まで明らかとなっていない. 本研究ではヒトSRYが制御する遺伝子を同定する目的で,SRY過剰発現系を構築しdifferential display法を用いた解析を行った.まず,ヒトSRYのcDNAを発現ベクターpCXN2に挿入したコンストラクトを作成した.次に,このSRY遺伝子過剰発現コンストラクトとSRYcDNAを持たないpCXN2をそれぞれヒトembryonal cell carcinoma由来の細胞株であるNT2/D1に導入した.48時間後にtotal RNAを回収し,これを鋳型として3種類のアンカープライマーと16種類の任意プライマーを用いてdifferential display法を行った.その結果SRYを強制発現させた場合において特に発現が増加していると思われるmRNAが4種類認められた.これらは反復配列を含み,詳しい解析が困難であった.今後はさらにプライマーの種類を増やして検討する予定である.またSRYを安定に発現する細胞株を作成し,これを用いたDNAチップによる網羅的な遺伝子発現パターン解析も念頭に置きつつ実験を進める予定である.
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