消化器機能改善薬としてメトクロプラミドを取り上げ、その体内動態の決定因子および血中薬物濃度と血漿中プロラクチン濃度の上昇との関係の薬動力学的解析を試みた。メトクロプラミドは極めて大きな代謝クリアランスを示し、その体内動態は非線形であるが、その機構については明らかにされていない。本研究の結果、ラットにおいてもメトクロプラミドの非線形な代謝クリアランスが再現され、その非線形性は蛋白結合の飽和あるいは代謝の飽和では説明し得ないことが示され、肺での代謝あるいは肺組織への吸着が示唆された。メトクロプラミドを定速静脈内注入したところ血中プロラクチン濃度は用量依存的に上昇し、そのEC50値はメトクロプラミドのドパミンD2受容体への結合解離定数に匹敵した。また、薬物注入により血中薬物濃度が維持されているにもかかわらず、血中プロラクチン濃度は低下し、薬物に対する反応性の低下が認められた。この低下はプロラクチン貯蔵部位の枯渇では説明できず、何らかの生体制御系の関与が示唆された。メトクロプラミドとプロラクチンの血中濃度の関係をドパミン-プロラクチンの相互フィードバックモデルを用いて解析したところ、得られた薬動力学パラメータはメトクロプラミドによるドパミンD2受容体遮断作用およびプロラクチンの血中からの消失速度を説明でき、モデルの妥当性が示唆された。ドンペリドンについても同様の検討を計画しており、ドパミンD2受容体遮断薬による高プロラクチン血症の発現機序と回避法を確立する予定である。
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